安全性について

(1)たん白加水分解物とは

たん白加水分解物は、食品添加物ではなく、大豆などの植物性たん白質やゼラチンなどの動物性たん白質を原料とした食品素材です。
2008年7月にコーデックス委員会で安全確保のための基準・規範が策定されました。日本アミノ酸液工業会会員企業が製造している「たん白加水分解物」は基準・規範を順守しており、安全が確保できている事を確認しております。

(2)クロロプロパノール類

クロロプロパノール類(3-MCPD、1,3-DCP等)とその脂肪酸エステル類は、油脂と塩素を含む食品原料を加熱した際に生成する物質の一種であり、1990年代にこれらが発がん性物質であるとの疑いがかけられました。2000年代以降、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)、 EU/SCF(Scientific Committee for Food, 欧州食品科学委員会)、およびEFSA(欧州食品安全庁)がクロロプロパノール類とその脂肪酸エステル類のリスク評価を行いました。

JECFAの評価によると、3-MCPDに関する動物実験では、遺伝毒性は確認されず、発がん性はラットに大量に投与した場合に確認されました。一方、1-3-DCPについては遺伝毒性発がん物質であることが疑われています。JECFAでは、一般の人が食事から3-MCPD又は3-MCPD脂肪酸エステル類を摂る量は、一生摂り続けても健康への悪影響がない量であると結論づけられています。また、1,3-DCPも食品から摂る量が少ないため、人の健康に悪影響が生じる可能性は低いと結論されています。

コーデックス委員会はクロロプロパノール類を高濃度に含む酸加水分解植物性たんぱく(アミノ酸液)を原料とする液体調味料の流通を防ぐための基準値を設定しています。
たん白加水分解物では3-MCPDと1,3-DCPの生成濃度に相関があり、3-MCPDの濃度が1,3-DCPの濃度より高いため、3-MCPDの濃度に最大基準値を設定することで、食品中のクロロプロパノール類を管理することにしました。コーデックス委員会が策定した酸加水分解植物たん白を含む液体調味料中の3-MCPDの最大基準値は0.4mg/kg (2008年7月最終採択)です。この数値は、製造工程で適切な低減措置を実施した場合に技術的に達成可能なできるだけ低い値として設定されています。

日本アミノ酸液工業会ではアミノ酸液中のクロロプロパノール類の低減対策に取り組んできました。
たんぱく加水分解物は様々な加工食品の原材料の一部として使われており、その中でも配合量が最も高いのが醤油です。日本国内の一人当たりの醤油の摂取量は約18g/人/日(2021年)と算出できます(*1)。仮に醤油のすべてがたんぱく加水分解物であったとしても、3-MCPD摂取量は最大5.2μg/人/日となります(*2)。体重60kgの人であれば0.09μg/kg体重/日となり、2016年にJECFAが設定した暫定最大耐容一日摂取量(4μg/kg体重/日)よりも低い値となっています。
実際にはたんぱく加水分解が原材料の一部として使用されていることを考慮すると、現在の食生活実態ではたん白加水分解物を由来とする3-MCPDの摂取量が極めて低いレベルであることがわかります。

*1:醤油の生産量(食品産業動態調査 農林水産省)、日本の総人口(人口推計 総務省統計局)参考
*2:当会会員企業のアミノ酸液中の3-MCPD濃度実測値:最大0.29mg/kg(2016年農林水産省実態調査)参考

(3)コーデックス委員会とは

コーデックス委員会は、消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1963年に国連の国連食糧農業機関(FAO)及び世界保健機構(WHO)により設置された国際的な政府間機関であり、国際食品規格(コーデックス規格)の策定等を行っています(我が国は1966年より加盟)。コーデックス委員会の下に、計28部会(休会中の部会も含む)が設けられており、部会は、加盟国の中から選ばれたホスト国が運営しており、会議は通常ホスト国で開催されています。

コーデックス委員会概要

加盟国 188カ国※1、1加盟機関(EU)※2
事務局 FAO本部(ローマ)

  • ※1)2018年5月現在
  • ※2)2003年6月の第26回総会で、加盟機関としてはじめて欧州共同体(EC)が承認されました。なお、2009年12月のリスボン条約の発効により、欧州連合(EU)がECの権限を継承しました。

農林水産省「コーデックス委員会概要」より。

コーデックス委員会の目的

  • (a) 消費者の健康を保護し、食品貿易の公正な実施を確保します。
  • (b) 国際的な政府間機関及び非政府機関が行う全ての食品規格に関する業務の調整を促進します。
  • (c) 適切な組織の援助により、規格草案の優先順位を決定し、作成の着手及び指導を行います。
  • (d) 上記(c) に基づき作成された規格を最終決定し、コーデックス委員会で公表します。
    この際、実行可能であればどこでも、上記(b)に基づき他の機関が既に最終決定した国際規格と共に、地域的なまたは世界規模の食品規格のいずれかとして公表します。
  • (e) その後の状況の進展を踏まえて、公表された規格を適宜改正します。

厚生労働省「コーデックス委員会の目的」より。

(4)コーデックス規格とは

コーデックス規格とは、コーデックス委員会のそれぞれの部会で議題を審議、食品成分の安全性と必要性の両面から有用性が認められたものに対して設定される、食品の規格や有害物質量の制限といった基準のことです。
国際的な食品の規格・基準をコーデックス規格として設定することにより、消費者の健康を保護し、公正な食品の貿易を確保できるようになります。世界貿易機関(WTO)の多角的貿易協定のもとでは、国際的な制度調和をはかる基準として位置づけられています。

たん白加水分解物関連では、2008年7月に安全性を確保する国際基準などが定められました。